PRECURE SQUARE solo


Scene15◆エピローグ〜美しき空

 ヘブン♪ イレブン♪ しあわせきぶ〜ん♪
……でおなじみの、大手コンビニエンスストア『ヘブンイレブン美空町店』。レジには女子高生のアルバイト店員が立っていた。彼女の長髪は、二つに分けられ、丸く束ねているのだが、ボリュームがある為に巨大なおだんごと化していた。ネームプレートには『はるかぜ』と記されている。
彼女はいささか退屈しているようだ。近所で騒ぎがあったらしく、お客さんが一人もいないのだ。何でも、マンションから落ちそうになった女の子が、スーパーヒロインに助けられたとか。いかにも美空スポーツが飛びつきそうな話題だが、明日のトップ記事になるだろうか?
 彼女は退屈しのぎに、新聞置き場から美空スポーツを1部拝借し、トップページを眺める。
 本日のトップニュースは『美空湾の人魚姫、密猟者を撃退!!』であった。

「はははは……。今日も美スポは正常運転。世は全て事も無しだねぇ。」 

 ピンポーン♪

 入り口のセンサーが反応し、チャイムが店内に鳴り響く。新聞に夢中になり、下を向いていたおだんご頭の店員は、慌てて入り口を向くと、にこやかに挨拶する。

「いらっしゃいませ、こんにちは〜〜〜♪ って、なんだ。ぽっぷか。」
「お姉ちゃん! お客相手に『なんだ』は無いと思うけど?」
「これは失礼いたしました。何をお求めでございますか?」
「ちょっとお手洗い借りたいんだけど、いい?」
「なんだ結局冷やかしじゃん。ま、いいけどさ。………それにしても、こんな遅くまでどうしたのよ。テスト期間中なのに、よゆーじゃん。」
「世の中にはテストよりも大切なことがあるんですよ〜だ。」
「はいはい。あんたにゃ口じゃかないませ〜〜〜ん……って、
どうしたのよそのヒジ、血だらけじゃん!!」
「大丈夫だよ。ちょっとダイナミックに転んだだけだから。見た目ほど酷くないし、もう乾いちゃったし、水で洗い流せば奇麗になるよ。」
「そう言う問題じゃないでしょ!! ちょっと来なさいぽっぷ!! 沢田部長すみません! ちょっとレジをお願いします!!」

 おだんご頭の店員、春風どれみは、妹ぽっぷの手を引っ張ると、店の奥の事務所へと連れ込む。そしてぽっぷを椅子に座らせ、棚の上の救急箱をおろした。

「へ〜〜〜。ちゃんと用意してあるんだね。店員用?」
「コンビニ仕事の怪我なんてバンソーコーで十分だよ。これはあたし専用なの!!
「へ? どゆこと?」

どれみは顔を赤らめながら答える。

「私がドジで、常識ではあり得ない事で怪我をするから、心配したオーナーさんが、わざわざ買ってくれたんだよ。私、これでもこのお店の看板娘だしね。」

 建前上は、一応全店員の為に買ったものなのだが、どれみ以外に使う者はほとんどいないため、他の店員からは『春風専用機』などと呼ばれている。
 ちなみにどれみが看板娘というのは、誇張なき事実である。先日の恵方巻、通称『丸かぶり寿司』の予約件数でも、人脈の広さと押しの強さが幸いして、個人単位での地域ナンバ−1を達成してしまったというのだから凄まじい。MAHO堂での経験は、確実にどれみの接客スキルを高めていたのだ。

「う〜〜、しみる〜〜。もうちょっと優しくしてよ、お姉ちゃん。」
「まったく! 判ってる? あんたの身体は、あんただけのモノじゃないんだよ! あんたのその指先には、春風一族の期待がかかっているの! 一族の星なの! あんたがピアノをやめたいのなら無理に引き止めないし、努力した上での挫折なら怒らないけど、つまらない事に関わって、怪我で断念…なんて結末だけは、お姉ちゃん絶対許さないからね!」
「わかってるよ、それくらい。それより………、この怪我の事、お母さんには絶対ナイショだからね。」
言えるわけ無いでしょ! お母さんが知ったらショックで寝込んじゃうよ。」

 更に小言を続けようとしたどれみだったが、そこでぽっぷのポケットから聞こえたケータイの着信音に遮られる。利き手が治療中で動かせないため、ぽっぷはケータイを左手で操作する。ピアノで両手を使っているからだろうか? 器用なものである。

「あれ、ひなこ先生からだ。お姉ちゃん、ちょっとごめんね。
……もしもし、ぽっぷです。お久しぶりです、ひなこ先生。え? ………いえ、私、ここしばらく美空小には行ってませんよ。何かあったんですか? はい……。はい……。そうなんですか。ええ、私は元気ですよ。テスト期間中なのがちょっとユウウツですけど。……えへへへへ、そうですね。今度機会がありましたら遊びに行きます。はい。はい。失礼します。」
「何? どうしたの?」
「さあ、美空小で何かあったらしいよ。」
「ふ〜〜〜〜ん。」
「………」
「それで? 何があったの?」
「知らないよぉ。」
「ウソおっしゃい! あんたみたいにしたたかな娘が、こんな私みたいなケガをするわけ無いでしょ!!」
「うわぁ、傷つくなあ。私だってお姉ちゃんの妹だもの。ドジの一つや二つ踏んじゃうよぉ。特に『策士、策に溺れる』ってタイプのドジなら、しょっちゅうだよ。」
「またそうやってムズカシイ言葉でケムに巻くんだから!!」
「え!? む、難しいかな………。ごめん。」

「………ハイできた。応急措置だけど、やらないよりはましでしょ。一応目立たないようにしたつもりだけど……。」
「ありがとう、お姉ちゃん。痛みも引っ込んじゃった。これなら白衣の天使もイケるんじゃない?」
「はっはっはー。当然かな。でも、人の命に関わる仕事はやめとくよ。…私のドジで人を殺めたくはないし……(TT)」
「ははは……。まあ、オチもついた事だし、そろそろ帰るね。」

 コンビニの出入り口に向かいながら、どれみはぽっぷに話しかける。

「……ねえ、ぽっぷ。……あんたさ、みんなの期待に応えようとして、無理してるんじゃない? なんだったら、あたしからお母さんに話したっていいんだよ。」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ピアノは好きでやっているんだもの。だから勉強で手を抜いて負担を減らしているんだよ。」
「あはははは、それなら大丈夫だね。まあ、精々赤点をとらないよう、頑張りなよ。」
「……お姉ちゃんもね(ニヤリ)。」
「うっ。」

 どうやらぽっぷは大丈夫そうだ。何やら隠し事をしているようだが、それはお互い様だろう。深くは詮索するまい。
 ひと安心したどれみがレジに戻ると、美空スポーツがレジ横に起きっぱなしになっていた。誰だよ犯人は! あ、あたしか。自分が出したのだと思い出したどれみが、美スポをきれいにたたみ、新聞置き場へと戻す。すると店を出ようとしたぽっぷが、驚いた顔をして戻って来た。

「ちょっ! ちょっと来て!! お姉ちゃん!」
「え? 何? どうしたの?」

 ぽっぷに連れられ、店先に出たどれみは、上空を見て驚いた。虹色に輝く光のカーテンが大空に揺らめいていたのだ。

「うっわ〜〜〜〜〜! キレ〜〜〜〜〜〜イ♪ 魔女界みたいじゃん! 何なの? これ!!」
「オーロラだよ。 ……この方角は美空小だね。ヒョドラと関係あるのかな……。」
「これがオーロラ? でもオーロラって、北極や南極の側でないと見れないんじゃないの?」
「そんな事は無いよ。北極や南極の側には適わないけど、日本でも観測されているよ。一番古い記録だと『日本書紀』に書かれているんだって。昔、オーロラの事は赤気(せっき)って呼ばれてたんだけれど……。このオーロラ、なんか変だよ。赤くないし……奇麗すぎる。」
「ナニ言ってんのよ。キレイならそれでイイじゃん。」
「……時々、お姉ちゃんのそう言うところ、スゴくうらやましくなるよ。」
「……………もしかして、バカにしてる?」
「いえいえ、とんでもありません。」

 オーロラに気付いた人達が立ち止まり、大空を見上げる。中には写真を撮っている人も居た。明日の美スポのトップ記事は『美しき空』で決まりだろう。

「あ、そうだ。ぽっぷは美空市の名の由来って知ってる?」
「名の由来? 美空市の? 知らないよ。」
「昔、はづきちゃんから聞いたんだけどね。空がキレイだったから美空って名付けられたんだって。」
「へえ、そうなんだ……。奇麗な空………。美しき空………。だから美空………。
 それって、まさか! 美空市には大昔からオーロラが出てたってコト?」
「う〜〜〜ん、そこまでは判らないけど。そうかもしれないね。気になるんだったら、直接はづきちゃんに聞くといいよ。郷土の歴史を色々調べているみたいだからさ。」
「……そだね。そうするよ。」

 春風姉妹は再びオーロラを見た。姉は嬉しそうに……。妹は不安げに……。


◆ ◆ ◆ ◆ 第2番・完 ◆ ◆ ◆ ◆


◆ ◆ ◆ ◆ 予告 ◆ ◆ ◆ ◆


「今日は年に1度のピアノ発表会! 私も頑張らなくっちゃ!」
「おおっ、愛しい嫁の晴れ姿が見れるピュか! それは楽しみだピュ。」
「あ、ごめん。ゼピュロスはお留守番だから。」
「んなっ!! 何故だピュ!! オレのどこが不満なんだピュ!!」
「え〜? まあ、強いて上げるなら……全てが。」
「ガァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン(><)!?」
「無茶言わないで。それにちょっとイヤな予感もするんだよ。
なんだか発表会で一波乱起きそうでさ。だからお願い。お留守番しててよ。ねっ。」

プリキュアスクエア◆熱奏の第3番

『因縁のライバル、えりか再び!』

『発表会(0゚・∀・)ワクテカ』

「さよなら三角、また来て四角♪ 四角はプリキュアスクエア!」


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