PRECURE SQUARE solo>#03Aパート
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Scene0◆アバンタイトル〜霧の町

「ここ………どこ?」

 春風どれみは目の前に広がる景色に唖然とした。辺り一面は白くて深い霧に覆われ、1メートル先も見えない。ついさっき晴れ渡った夕焼け空を眺めたばかりなのに、目にゴミが入ったかと思って瞬きした瞬間、世界は変わり果ててしまったのだ。
 積雪などのある冬山では、視界全体が真っ白になる『ホワイトアウト』という現象があるらしい。だが、どれみは冬の山に登った覚えなどない。もしかして夢でも見ているのだろうか? どれみは目をこすったり、ほっぺたをつねってみたりしたが、真っ白な景色は変わらなかった。これは現実なのか? それとも覚めない夢なのか? どれみには区別が付かなかったが、どちらにせよ良い状況ではない。
 どれみが一歩前に歩き出した途端、何かが顔に激突した。鼻を押さえながら前を観ると、白い鉄柱が現れていた。色が白いせいで濃霧に紛れていたのだ。見上げるが鉄柱は濃霧に隠れて先が見えない。足元を見ると、かろうじて地面が見える。しゃがんで見ると、鉄柱はアスファルトの地面に付き立っていると判る。

「これって……道路標識の柱?」

 どれみは手で触れてみる。鉄柱はヒヤリと冷たく、アスファルトの地面は湿っていた。しゃがんだまま前に移動すると、アスファルトに道路にある白いラインが引かれているのが見えた。アスファルトもラインも作りたてのように新しいが、鉄柱には古びて痛んでいる。歩道部分の狭さから察するに車二台が通れるほどの市道……。それは間違いなく、さっきまで歩いていた下校コースだった。つい最近、古びたアスファルトを敷き替えたばかりで、道路だけ新しくなっていたのだ。

「そうだ、かよちゃん! かよちゃん、どこにいるの!?」

 夕方、学校の終わったどれみは親友の長門かよこと共に、バイト先のコンビニに向かって一緒に歩いていた。濃霧に包まれる直前、どれみは駆けだしていたから5〜6メートル後方にいたはずだった。
 しかし、呼べど叫べど返事はない。さっきまで一緒にいたはずの長門かよこはどこに行ってしまったのか? 走って探し回りたい気分だったが何に激突するか判らない。濃霧に視界を奪われ、普通に歩くのすら困難な状況だった。やがてどれみは恐ろしい事に気付く。

「まさか……だれも……いないの?
 だっ…、
だれかぁ〜! だれかいませんか〜!」

 白い闇に響くのはどれみの声だけだった。長門かよこどころか、何の気配も感じないのだ。人の気配や乗り物の走る音、鳥や犬の鳴き声、そして風すらも無い。濃霧が全てを覆い隠し、消し去ってしまったかのようだ。しかし通学路は朝の登校時こそ賑わうが、下校時はもともと静かなものだ。それにこんなひどい濃霧が町中で発生すれば、外出を控えるのが普通だろう。

「そうだ! ケータイなら……」

 どれみはポケットから携帯電話を取り出した。携帯には複数のストラップがつけられており、そのうちの一つにデフォルメされた牛のフィギュアが付いていた。昨年の夏、父の田舎に里帰りした際に土産物屋で見つけた飛騨牛のフィギュアだった。フィギュアはどれみが携帯を操作する度にブラブラと揺れる。しかし、不思議なことに、どんなに揺れてもフィギュアの顔はどれみの方向を向いていた。まるでどれみの顔をじっと見つめているかのように……。

「かよちゃん……出て。出て。出てよ……かよちゃん!」

 しかし、どれみの期待とは裏腹に電話は繋がらなかった。恐らく電源を切ったままなのだろう。長門かよこは学校にいる間、律儀に携帯の電源を切っている。ただ、下校時も度々電源を入れ忘れるため、遠距離恋愛中の林野まさとを何度も心配させているという。
 どれみはかよこに連絡するのはひとまずあきらめ、自宅に電話した。だが、どういう訳か繋がらない。自宅は有線電話だから、携帯のようなエラーは発生しないはずなのに…。
 そこでどれみはバイト先のヘブンイレブン美空町店にかけてみる。24時間営業のコンビニだから店員が必ず誰かいる。台風の中でもお客さんのためにと開き続けていたのだ。濃霧程度で店を閉めるわけがない。だが、やはり繋がらなかった。

 もしかして自分の携帯に問題があるのでは? そう思ったどれみは、震える手で液晶画面の左上を確認する。バッテリー残量は……十分だ。問題ない。アンテナだって問題ない…はず……?
 どれみは絶句した。液晶画面にはアンテナ表示が全く無かったのだ。表示が正しいなら、近くには携帯電話の基地局が一つもないことになる。しかし山奥や地下ならまだしも、美空町内でそれはあり得ない。それじゃあ……ここはどこ?

「そんな……そんなはずない。そうだ、きっとお昼に床に落としちゃった時に携帯が壊れちゃったんだよ。ああんもう! 私ってどうしてこんなにドジなんだろう。せっかく買い換えたばかりなのに…。本当に嫌になっちゃうよ。
 それとも停電……かな? それで基地局が止まっちゃってアンテナ立たなくなったとか? ああ、そうか。そうだね。そうだよね。それなら仕方ないよね。なんだ、私心配しちゃったよ♪」

 どれみはわき上がる不安を心の奥底に押し込め、霧の中をヘブンイレブン美空町店に向かって手探りで進み始めた。視界が悪くて普通に歩くことも出来ないが、コンビニはもう近くだ。五分もあればたどり着けるはず。バイト先のコンビニになら絶対店長がいる。今ならお昼のパートのおばさん達もいる。相方の沢村先輩は遅刻なんかしないから、とっくに来てるはずだ。自分独りじゃ無理だけど、みんなの助けを借りれば、きっとかよこちゃんを探せる。みんながいれば……。



◆ ◆ ◆ ◆ 天空の独奏曲 第3番 ◆ ◆ ◆ ◆

『霧のラビリントス 春風どれみの消失』


Scene1◆消えたどれみ

 春風家に一本の電話があったのはぽっぷが学校から帰宅してまもなくのことだった。どれみ姉のバイト先、ヘブンイレブン美空町店からだった。その日、どれみは夕方から出る事になっていたが、時間が過ぎても来ないし、携帯にも繋がらないのだと言う。遅刻自体はいつもの事で、それはそれで問題だったが、これまではちゃんと遅れる旨を連絡して来た。しかし今日は、連絡どころか携帯にすら繋がらない。電池切れか、それとも電源を切っているのか。

「まったく、何やってるんだよ! バカ姉め!」

 ぽっぷは制服のまま家を出ると、人目のつかないところでキュアクロリスに合体する。そして空へ舞い上がり、千メートルほど上空で静止した。空中からなら美空町全体が把握しやすいし、『タカの目』の能力を駆使すれば1センチ四方のものまで見分けが付く。姉のお団子ヘアーなら一目でわかるし、携帯が故障したか電池切れで連絡が取れないだけなら、全速力でコンビニに向かっているはずだ。
 しかし、どれみ姉は見つからなかった。どこかの建物の中にいるのか。それとも美空市駅前まで繰り出した? 捜索範囲を美空市全体に広げ無ければならないとなると、キュアクロリスの能力をもってしても探し出すのはホネだ。ただの遅刻ではないとすると……どんな可能性がある?

  1. 事件・事故に巻き込まれて、バイトどころではない。
  2. 困っている人を放っておけず、バイトどころではない。
  3. 新たな恋を見つけて、バイトどころではない。

 周囲を見渡したところ、事故らしきものは見あたらない。事件と言っても大小様々だが、現時点では可能性は低いだろう。困っている人を放っておけないとしても、お店に連絡をしないのもおかしい。すると、新たな恋を見つけた……のか?
 確かにどれみ姉が『恋する乙女』になれば、周囲が見えなくなってしまうかもしれない。恋路を邪魔されたくなくて携帯の電源を切っている可能性もある。だとすれば2年ぶりの恋……か。本当にそうなら良いのだけれど……。

「いやいやいや、お店に迷惑かけるのはちっとも良くない! 良くないよお姉ちゃん!」

 何にせよ手がかりがないことには探しようがない。改めて美空町を見渡すとコンビニから200メートルほど離れた道を、見覚えのある少女が歩いていた。どれみ姉と同じ制服……。何度か会ったことがある。長門かよこだ。たしか美空高校の中では、どれみ姉の一番の親友だったはず。もしかして、何か知っているのではないだろうか?
 ぽっぷは近くの人気のないところへ降り、合体を解くと、長門かよこを追いかけた。

「かよちゃ〜〜〜〜ん!」
「あれ? ぽっぷちゃん……。こんにちは。久しぶりだね、どうしたの?」

「え〜っと……その、うちのお姉ちゃん見てない?」
「どれみちゃん? ……さっきまで一緒だったけど。」
「さっきまで……一緒だった?」
「うん。コンビニに行く途中まで、一緒に下校してたよ。だけど途中でどれみちゃん、今日は早く行かなくちゃいけなかったって気付いて、慌てて走り出したの。私も追いかけたんだけど、途中で見失っちゃって。疲れちゃったから、さっきまで近くの公園でメールしながら休んでたの。ぽっぷちゃんコンビニには行ったの?」
「いえ、その…。コンビニから電話があったんです。お姉ちゃんが来ないって。だから慌てて探しに…。」

「じゃあ、行き違いになったんだよ。ここからなら歩いたって5分とかからないもの。」

「行き違い……。ああ、そっか。その可能性を忘れてた。」
「なんだか意外だね。しっかり者のぽっぷちゃんも、お姉ちゃんのことになると我を忘れちゃうんだ。」
「え? あははは、そうかも(^^;」

 そうか。自分の早とちりだったか。ホっと胸をなで下ろしたぽっぷは、別れ際、何気ない質問をした。

「ところでかよちゃん、お姉ちゃんと別れたのって何時頃だった?」
「え? う〜ん。細かい時間は覚えてないけど、5時前だったのは間違いないよ。」
「あ、ありがとう。じゃね。」

 コンビニから自宅に電話があったのは5時10分。全速力で走ったなら、5時には着いてるはず。どう考えても時間が合わない。
 とにかく行き違いかどうかを確かめるため、ぽっぷは直ちにコンビニに電話を入れる。電話は数秒とかからずに繋がり、耳元に店長の声と共にお店の忙しそうな騒音が響いた。そして店長はぽっぷに伝えるのだった。どれみ姉が未だ出勤してないと。

「店長さん、本当に申し訳ありません。今日は休みって事にしてください。姉が帰ったら、きつく叱っておきますから…」

 ぽっぷはそう詫びて電話を切ると、改めてどれみ姉に電話を入れる。まだ事件と決めるには早計だ。しかし、あらゆる状況がぽっぷに事件だと訴える。そして携帯からどれみの声が聞こえることはなかった。


Scene2◆父と母

「何だって? どれみと連絡がつかない?」
「あなた、どうしよう。警察に探してもらった方がいいんじゃないかしら……」
「まあ待ちなさい。ちょっと連絡がつかないからって、いちいち警察に捜索願いを出していたらきりがないぞ。まだ夜の9時にもなってないんだ。不審者が現れたなんてウワサも聞かないし、いつものドジとおせっかいのコラボなら、許容範囲内じゃないか?」
「でも、なんだか嫌な予感がするのよ! いつもと違う事がどれみに起きているような気がするの!」
「う〜ん。取り越し苦労だと思うけどなあ…。
 それでぽっぷ、どれみが行方不明になったのは町内なのか? それとも町の外なのか?」

「学校が終わってアルバイトに向かう途中だから、美空町内で間違いないと思う。コンビニ近くまで親友のかよちゃんが一緒に下校してたって話してたから……」
「だったらなおの事、通報は後回しだ。町内の事ならもっと頼れるところがある。心当たりを回ってみるからちょっと待ってなさい。……ああそうだ。どうしても不安なら、まずは中島巡査かその奥さんに相談するといい。中島巡査なら町内会も兼ねているからね。警察に捜査願いを出すにしても話が通しやすい。」
「中島さん? ……そ、そうね、息子さんの正義君はどれみのクラスメイトだったのだし…。」

 パニックになりかけていた母はるかに対し、父渓介は妙に落ち着いて頼もしく見えた。そんな二人にぽっぷは何となく違和感を覚える。こういう時、取り越し苦労をしてるのは決まって父なのだ。いつもと逆なのは何故だろう…。
 こうして春風渓介は夜の美空町へと繰り出した。実はどれみ姉の失踪にかこつけて酒を飲みに行ったとか? まさか…ね。

「ねえお母さん。お父さん、どこへ出かけたの? 警察より頼れる人って誰? ひょっとして私立探偵さんとか?」
「え? ああ……。もしかしたら腕利きの名探偵よりも頼もしいかもしれないわね。美空町町内会よ。」
「町内会って……。町のお祭りに参加したり、日曜日に清掃活動をしたり、時々『寄り合い』っていう名の飲み会をしてる……あの町内会?」
「そう。美空町は古い町だから人の結びつきが強いのよ。だから町内で何か起きれば、すぐに噂で伝わるの。他の町から越してきた人から見れば閉鎖的に映るかもしれないけど、この町の治安が良いのも、町内会の皆さんが陰ながらがんばっているお陰なのよ。いざと言う時の為に、緊急用の連絡網だってあるんだから。そういう連絡が来てないって事は、大丈夫ってことなのよ。だからぽっぷ。どれみの帰りが遅いからって、別に心配しなくたっていいのよ。」

 ぽっぷに笑顔を見せるはるかだったが、その言葉は震えていた。ぽっぷ同様に、母も何か感じ取っているのだろうか? ぽっぷも心配だった。どれみ姉はコンビニの近くまで行きながら、そのまま失踪したのだ。どう考えても普通じゃない。家出する理由も思いつかない。昔ならステーキの匂いに釣られる事もあったかもしれないが、さすがに中学生以降は自制している。他に考えられるのは『オトコ』くらいだが……。
 中学時代にあれだけ悩み苦しんで、恋に臆病になってしまった姉が、安易にイケメンになびくとも思えない。どう考えても何かしらの事件か事故に巻き込まれたとしか、ぽっぷには思えなかった。

 ぽっぷが考えを巡らせている間、母はるかは中島家に電話していた。相手は巡査ではなく奥さんだった。父兄としてのお付き合いもあって話をしやすいのだろう。電話を終えたはるかは普段着の上にコートを羽織りながらぽっぷに話しかける。

「ぽっぷ。中島さんが相談に乗ってくれるって言うから、お母さん、ちょっと出かけたいのよ。一人でお留守番になるけど、お願いできるかしら?」
「え? そりゃあ、構わないけど…。」

 母はるかは居ても立ってもいられないようだった。緊急の連絡があるかもしれないから、誰かが自宅待機しておく必要もある。それにぽっぷも中学生だ。夜とはいえ留守番を怖がる年じゃない。1時間程で戻ると言い残し、春風はるかも夜の美空町へと繰り出した。
 こうしてぽっぷは独り、春風邸に残されるのだった。


Scene3-1ノイズ

 昔の人は言っていた。「テレビばかり観ているとバカになる」と。本当にそうかもしれないと、ぽっぷは思った。退屈しのぎにつけてはみたが、ろくな番組がないのだ。リモコンでテレビのスイッチを切ると、夜の静寂が戻る。
 ぽっぷはリビングルームで留守番をしていた。いつもなら2階の自室に籠もっている時間だが、突然電話がかかってくるかもしれないし、不意に訪問者が訪れるかもしれない。それにこんな状況では勉強する気にもなれなかった。

 ぽっぷは懐から携帯を取り出すと、ダメ元で、もう一度どれみ姉の携帯に電話してみる。プップップッとアクセス音。どれみ姉の携帯が電波を受信すれば呼び出し音に変わるが、その後に流れるのは、今回も留守番サービスセンターへの接続メッセージだろう。圏外か、バッテリー切れか、それとも自ら電源を切ったのか……。

プルルルルルルル♪
 ぽっぷは飛び上がった。突然呼び出し音が響いたのだ。慌てて携帯を耳に押し当てる。

プルルルルルルル♪
 出て! 出て! 出てよお姉ちゃん! ぽっぷは一言一句逃さないよう聞き耳を立てる。

プルルルルルルル♪
 留守番サービスに切り替わらないよう、ぽっぷは祈る。

プルルル…
 呼び出し音が途切れた……と思った矢先、受話口から激しい雑音が響く。突然の騒音に驚いたぽっぷは思わず耳を離した。ザザ…ザ……ザ… それはまるで、AMラジオを聴いているときに入る砂嵐のような音だった。電波障害だろうか? とにかくどれみ姉の携帯につながったのだ。ぽっぷは再び携帯を耳に当てると、ノイズに耐えながら聞き耳を立て、姉に呼びかける。

「もしもし、お姉ちゃん! 聞こえる? 聞こえたら、返事して!」
「……ぽっぷ………ぽっの?…」
「そうだよ! ぽっぷだよ、お姉ちゃん! 一体こんな遅くまでどうしたの! みんな心配してるよ!」
「……た…やっ…きけた…」

 雑音のせいで聞こえにくいが、どれみ姉に間違いない。ベソをかいているのがわかる。

な…いるの…ど…しいの…」
「どうしてって……お父さんもお母さんも、お姉ちゃんを心配して探しに出かけちゃったよ。お姉ちゃんこそどこにいるのさ!」
「わ
し…お…か…自分のよ…ど…の?

 ぽっぷはソファーから勢いよく立ち上がると、携帯を持ったまま全速力でかけだした。階段を上り、昔のぽっぷの部屋に入り、その先に増築されたどれみの部屋の扉を行きよいよく開ける。

「お姉ちゃん!」

 真っ暗な部屋に人の気配はない。明かりを付け、辺りを見回すが、やはり誰もいなかった。どれみ姉に担がれたのか? 改めて携帯を耳に当てると、ぽっぷは叫んだ。

「いないじゃん!」
「何言ってるの! ちゃんと部屋にいるよ! ぽっぷこそ、こんな夜遅くに、私を置いてどこに行っちゃったのさ!」

 ぽっぷは驚いた。雑音が小さくなり、どれみ姉の声がはっきり聞こえるようになったのだ。電波障害が弱まったのだろうか。2階に上がっただけで?

「もう一度確認するよ? お姉ちゃんは自分の部屋にいるの?」
「そうだよぉ! 今日大変だったんだから!
 下校中に町にすごい霧が出ちゃってさ。全然前が見えなくて、普通に歩いたら鉄柱を顔にぶつけちゃうし…。怖くて手探りで歩かなくちゃいけなかったから、帰るのにものすごく時間がかかったんだからね。それに停電で明かりもつかないし、お店にもおうちにも誰もいないし…。みんなずるいよ。私を置いていつの間に避難しちゃったの? ひとりぼっちで心細かったんだから〜。」

 ぽっぷの声に安心したどれみは、ベソをかきながらも状況を説明する。しかしぽっぷは、どれみの話を聞けば聞くほど緊張していく。すごい霧? 停電? 誰もいない? それってどこの美空町だよ! しかも自室に帰ったと話すどれみ姉の姿は、どれみの部屋にはどこにも見あたらないのだ。
 どれみ姉の話を聞きながらも、どれみの姿を求めて部屋を歩き回るぽっぷ。それが無駄だとわかっても、どれみを探し求めずにはいられなかった。だが、そうしてるうちに、ぽっぷは妙な事に気付いた。部屋の場所によってノイズの大きさに変化があるのだ。
 ぽっぷは試しにどれみの部屋を離れてみる。離れれば離れるほどノイズはひどくなった。今度は逆に近づいてみる。ノイズは徐々に小さくなり、どれみ姉の声もクリアになっていく。何かおかしい。ノイズの原因が電波障害として、数センチ単位で移動するだけで影響が変わるものだろうか?

「お姉ちゃん。何度も確認するようで悪いけど、お姉ちゃんは今、自分の部屋にいるんだよね?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「自分の部屋の……どこら辺にいるの?」
「どこら辺って……疲れちゃったから、ベッドに座りこんでるけど。どうして?」
「あ、うん。ちょっと気になることがあってね。」

 ぽっぷはどれみ姉がいると語ったベッドを見つめた。しかしそこには誰も見あたらない。もしや姉は透明人間になったのでは?と思い、そっと近づいて手で探ってみるが、ぽっぷの手はむなしく宙を切るばかりだった。ならばとぽっぷは、いつものどれみ姉を思い起こす。疲れてベッドの縁に座り込んでいるイメージを浮かべ、同じ場所に座り込んでみた。その途端、携帯の受話口から不快なノイズが完全に消えた。ぽっぷは立ち上がるとベッドから徐々に離れた。再びノイズが現れ、距離に合わせて徐々に大きくなった。

 ぽっぷは確信した。見えないし、触れない。携帯がなければ話も出来ない。だけど間違いなく、どれみ姉はそこにいるのだと……。


Scene3-2◆決意

 そこにいるのに、そこにはいないどれみ姉。どうすればいい? どうすれば姉を助けられる? 今できることは何? 今やらなければならないことは何?
 携帯…… そうだ、携帯電話だ!

「お姉ちゃん! 携帯のバッテリーは大丈夫?」
「わかんないよ。日が暮れてからはライトに使ってたから…もうヤバイかも(TT)」
「充電は出来ないの?」
「充電器は部屋にあるけど、停電してるから使えないんだよ〜」
「停電……。停電か……。そうだ、コンビニ! コンビニに行けば、使い切りの携帯用バッテリーが置いてあるでしょ。」
「そりゃあ、あるけど…あれ、お店の商品だよ」
「今は緊急事態なんだし、お金なんて後で払えばいいじゃん。バッテリーが切れて連絡が取れなくなったら、それこそ一大事だよ」
「うん……そうなんだけど…」
「なぁに? 何か問題あるの?」
「さっきも話したけど、外はものすごい霧でさ、日が出てるときでも真っ白で、前が全然見えないんだよ〜(><) 日が暮れたら暮れたで、明かりが無いから真っ暗だしさ。どこかに懐中電灯でもあればいいんだけど、暗くてさっぱりだし……」
「それなら私の部屋にあるから、それを使ってよ」
「え? なんであんた、そんなの持ってるの?」
「停電や災害に備えてに決まってるじゃん。こういう事もあろうかと…ってね」
「ぽっぷ……あんたってホントスゴイ子だね」

 携帯にノイズが入り始めた。どうやらどれみ姉がぽっぷの部屋へと移動し始めたらしい。ぽっぷもノイズの音が少なくなるよう移動する。そうやって自室の扉を開け、照明をつけると、ゼピュロスと目があった。話をしたげなゼピュロスだったが、ぽっぷは左手の人差し指を口の前に立て、ゼピュロスに黙っているよう合図する。

「あんたの部屋に入ったよ。どこにあるの?」
「私のベッドの下だよ。枕のある方ね」
「えっと……ここ…かな? あ、あった! あったよぽっぷ!」

 姉の嬉しそうな声を聞き、ぽっぷは安堵した。停電がどういったものかはっきりしない上、どれみ姉のいる美空町が同じ形をしているのか判らなかったので、本当に懐中電灯があるのか確証がなかったのだ。
 だけど懐中電灯はあった。明かりもつく。あとは……
 振り返ったぽっぷの視界に、再びゼピュロスが入ってきた。

「お姉ちゃん、ちょっと確認なんだけど、私の机の上に、鳥かご置いてある?」
「鳥かご? 前に小鳥を飼ってたときのやつ? うん、置いてあるけど?」
「その鳥かごの中に……ペンタローは入ってる?」
「ペンタローのぬいぐるみ? ううん、何も入ってないけど…。それが何か関係あるの?」
「ううん、何となく気になっただけ。」

 実は懐中電灯を購入してベッドの下に置いたのは、つい昨日の事だった。それがどれみ姉のいる世界にはある。一方でゼピュロスを鳥かごに入れてから、すでに半月以上経過している。ところがどれみのいる世界には、ゼピュロスはおろかペンタローぬいぐるみすら無い。もしかしたら謎を解く鍵だろうか? しかし、今はそれを考えている場合ではない。

「お姉ちゃん。夜が明けてからでいいけど、コンビニに行って携帯の使い切りの充電器を確保してね。連絡手段を確保しないとどうにもならないから」
「でも、濃霧で前が見えなくて大変なんだってばぁ」
「お姉ちゃんも町中で目の不自由な人、見たことあるでしょ? どうやって歩いていたか思い出して」
「え、えと……。盲導犬に引っ張ってもらう……とか?」
「もう! しょうがないなぁ! 杖だよ杖! 細長い棒で前に障害物がないか確認しながら歩けば、霧の中でも顔にぶつけずに済むでしょ」
「そ、そうか! ぽっぷ! やっぱあんたって天才だよ♪」
「おだてたって何も出ないよ。うちには杖はないけど……そうだ釣り竿! あれなら軽いし長さも調整できるから、お父さんの部屋から借りちゃおうよ。
 じゃあ、ちょっと整理するね。
 まず、お父さんの部屋で、杖代わりに釣り竿をゲット。
 夜が明けたらコンビニに行って携帯用使い切り充電器をゲット。いつでも連絡できるよう携帯を充電しておいて。
 水や食べ物は……用心した方がいいかもしれないから、飲み食いするなら封のされたものだけにして。判った?」
「うん……判った。あんたの言う通りにする」
「とにかくお姉ちゃんは自分の身の安全だけを考えて行動して。ゼッタイにお姉ちゃんを……」

 突如通話が切れた。どうやらどれみ姉の携帯のバッテリーが無くなったようだ。携帯を見つめながら、ぽっぷは言い損ねた言葉をつぶやく。

「ゼッタイにお姉ちゃんを助けるからね……」


Scene4◆元カレ

 どれみ姉は美空町に似て非なる異空間にいる……。ぽっぷは思わず右ヒジを触る。痛みこそ無いが、そこにはまだ傷跡が残っていた。水蛇ヒュドラとの対決……初めてプリキュアになった時についた傷だった。
 天空の女神キュアクロリスは、空中戦に特化したプリキュアでスピードが武器である。だから立体的な闘いが封じられた美空小学校の校舎内では、本来の力が発揮できなかった。しかも初陣の相手は猛毒と異常な再生能力を備えたレルネー沼のヒュドラである。ギリシャ神話によれば、英雄ヘラクレスすら一人では倒せなかった強敵なのだ。そのため、ゼピュロスは恐怖のあまり闘いを放棄して逃げだそうとしたほどだ。
 ヒュドラを倒さなければ、ひな子先生や美空小の後輩達は助からない……。ぽっぷはみんなを助けるため、様々な困難を知恵と勇気で乗り越えたが、死闘は数時間にも及んだ。最後の闘いが繰り広げられた頃には外は真っ暗だった。
 やっとの思いでヒュドラにとどめを刺した瞬間、キュアクロリスは凄まじい光に包まれる。視界が戻ると時間は夕方に戻り、破壊の限りを尽くされたはずの美空小にはどこにも闘いの痕跡が残されてなかった。唯一の痕跡は時計に刻まれた時間だった。携帯の時計を見ると夜の10時を過ぎていたのだ。だが、それも基地局との交信のおりに補正されてしまった。
 あの時の闘いを照明する唯一の物的証拠は、ぽっぷが回収したヒュドラの神札だけである。だけど間違いない。あの時ぽっぷはどれみ姉と同じように、美空町に似て非なる異空間にいたのだ。つまり、どれみ姉はヒュドラのような怪物に捕らわれた可能性がきわめて高いのだ。

「ゼピュロス! お姉ちゃんが怪物に捕らわれたみたいなの! どうすればいい?」
「そんなことを言われても、状況を説明してくれないと、さっぱり判らんピュよ(><) ていうかオレ、喋ってもいいピュか?」
「ああ、ごめん。そういえば、おしゃべりを禁止したままだったね」

 鳥かごの中で途方に暮れるゼピュロスを見て、ぽっぷは全く説明していないことに気付いた。色々あってゼピュロスに喋ることを禁止していたし、夕方、どれみ姉を捜す為にキュアクロリスになったときも、イライラしていて会話をしているような気分ではなかったのだ。そこでぽっぷはこれまでの経緯を、順を追って説明するが、期待するような答えは返ってこなかった。

「スマンピュ。確かに神や怪物の可能性は高いピュが、それだけじゃ犯人の特定は無理だピュ。霧に意味があるかどうかも判らんピュし、空間を作り出す能力なんて別に珍しくもないピュ。情報が少なすぎて対策を立てようがないピュよ」
「ちっ、使えねーペンギンだよ」
「ピュ? 何か言ったピュか?」
「ううん、なんっにも♪(^^)」

 ぽっぷは腕を組んだまま部屋をぐるぐると回る。新たな情報を手に入れる方法……。どれみ姉からの連絡を待つ以外に無いのか? しかし夜も遅い。姉が得体の知れない暗い霧の中をコンビニに向かう可能性は低い。携帯電話が回復するとすれば、早くて明日の朝だろう。それまで何も出来ないのだろうか?
 そんな時、ぽっぷが思い出したのは、ぷにゅちゃんことマジョリカの水晶玉だった。ぽっぷはその場に居合わせなかったが、水晶玉を使うことで、美空町にいながら大阪のあいちゃんのお母さんの状況を確認できたという。遠くを見渡せる水晶玉…か。ぷにゅちゃんが美空町にいてくれたら、どんなに心強かっただろう。しかし魔女界との交流を絶ってから5年が経過している。ピアノ発表会の帰りに平野かりんと共に、久々に立ち寄ったMAHO堂も無人のままだった。助けを求めたくても魔女界には連絡の取りようがない。
 魔女? 魔女と言えば……。そうだ! ぷにゅちゃんのライバルだったマジョルカがいる! 確か、今でもおんぷちゃんの事務所の社長を続けているはずだ。マジョルカの連絡先は判らないが、おんぷちゃんのアドレスなら知ってる。おんぷちゃんに頼めば何とかなるはずだ!
 ぽっぷは携帯アドレスから瀬川おんぷを選択し、メールを打ち込み始める。しかし送信ボタンを押すところで踏みとどまった。おんぷちゃんは仕事で忙しいから、直接電話をしても滅多に繋がらない。メールを送っても読んでくれるのは夜遅くだろう。それからマジョルカに連絡を取ってもらうのでは結局時間がかかってしまう。これではおんぷちゃんに負担をかけるだけで意味がないのではないか? ならば、もっと早く対応できる人物に連絡すべきでは? だけど……

「ええい! しょうがない!」

 意を決したぽっぷは、勉強机の鍵付き引き出しからアドレス帳を取り出す。携帯に入れているアドレスは、紛失や盗難など最悪の事態を想定して、必要最低限のものしか登録していない。他の情報は全てこのアドレス帳に納めているのだ。勉強机に置くと、最後のページを開く。そこにはクシャクシャにされたあと、広げられ、セロテープで留められた一枚の紙切れがあった。1度は破り捨て、ギリギリのところで廃棄をとどめた携帯アドレス……。それは、どれみ姉の『元カレ』の連絡先だった。迷いを捨てたぽっぷは電話番号を打ち込み、通話ボタンを押す。呼び出し音が10回ほど聞こえただろうか。留守番電話サービスに切り替わる直前に、姉の『元カレ』は電話に出た。その声は相変わらず、乙女心をくすぐるよな甘ったるい声だった。

「やあぽっぷちゃん。久しぶりだね。こんなに遅く、どうしたんだい?」
「あなたとは口も聞きたくないけど、なりふり構っていられないの。お姉ちゃんの情報をちょうだい!」
「え…。何を言ってるのか判らないよ。ボクはあれ以来、学校ですれ違うだけで、どれみちゃんとは口も聞いていないんだよ」
「しらばっくれても判ったるんだからね! どうせ水晶玉か何かでお姉ちゃんのプライベートを覗いているんでしょ!」
「はははは、ぽっぷちゃんにはかなわないなあ…。でも、誤解してほしくないんだ。中学時代のことだけど、それはどれみちゃんには許可を取ったことだし、ぽっぷちゃんのプライベートまでは覗くような真似はしてない。どれみちゃんと約束したからね。だからストーカー扱いは勘弁してくれよ?」 

 ああ、なるほど。どれみ姉が夜の一定時間、トイレにも行かなければお風呂にも入らず、鼻もほじらないで、誰もいないのに人目を意識するかのように行動していたのは、そう言うわけだったのか。
 この瞬間、ぽっぷが長らく抱えていた姉の謎が一つ氷解した。

「だったら当然、お姉ちゃんが今どんな状況にあるのかも判ってるんでしょ? 私は今、お姉ちゃんを助けるために、どんなことでも情報がほしいの!」
「ボクの持ってる情報なんて微々たるものだよ。役に立つとは思えないけどなあ」
「そんなことは気にしなくていい。役に立つかどうかは私が判断するから」
「ははは、本当にぽっぷちゃんにはかなわないよ……。じゃあ、一つだけ頼みがある。春風家の敷居をまたがせてくれるかい? これは電話なんかで話せるような内容じゃないからね」

 彼は暁やまとと名乗っていた。人間界で人間として暮らす為につけた名前だ。だけど本当の名前はわからない。判っているのは、彼が魔法使い界の王子様であると言うことだけだ。魔女と同じく寿命が長いため、2000年頃にどれみ姉と会って以来、本来の姿は小学生のままだが、今は魔法を使って高校生の姿に変身している。
 ぽっぷは暁が大嫌いだった。中学時代、小竹哲也と共に、姉の心を深く傷つけた張本人だからだ。そのせいで高校に入ってからのどれみ姉は恋に臆病になってしまった。だけど、今はそんなこと言っている場合ではない。

「お父さんやお母さんが帰ってくるまでなら、いいよ」


Scene5-1◆暁むさし

「ボクのことは『暁むさし』と呼んでくれるかな。『暁やまと』の弟って事にしてるんだ」

 春風家に訪れた暁は、身長もぽっぷとさほど変わらない本来の姿で現れた。かりそめの姿では魔法に制約が生じるため、度々その姿で町に繰り出していたが、うっかりクラスメイトの女子に目撃されたため、そのような設定を思いついたらしい。

「え〜っと…暁むさしクン。茶菓子も出さずに申し訳悪いけど、説明お願い」
「じゃあ、まずはこれを見てくれるかい」

 暁むさしは手のひらサイズの水晶玉を取り出す。魔女が占いなどで使う球体の水晶玉に比べるとかなり小さい。ぽっぷがのぞき込むと、水晶玉の中に光が揺れるのが判る。だが、真っ白になったり暗くなったりで、何がなんだかさっぱり判らない。

「……故障してるの?」
「まさか。小さいけど、魔法使い界でも最高性能の水晶玉だよ。」
「じゃあ、何が映ってるわけ?」
「ありのままのものが映っているのさ。次にプレデター視点に切り替えるよ」
「プレデター視点て(^^;……もしかしてサーモのこと?」
「そう言った方が判りやすいだろ? 雰囲気も盛り上がるし」
「……………」

 水晶玉に映し出される映像がカラフルに変化する。物体の熱分布を色分布で映像化するサーモグラフィだ。すると人の姿が現れた。体格や動きから、年頃の娘らしいことが判る。右手には細長い棒のようなものを持って、地面を探りながら慎重に歩いている様子がうかがえた。

「これって……もしかしてお姉ちゃん?」
「うん。ライブ中継だから、今現在のどれみちゃんだよ。どうやら果敢にも外出しているみたいだね」
「じゃあ、さっきの光は懐中電灯で……真っ白にしか見えなかったのは……」
「濃霧がどれみちゃんを覆い隠しているのさ」

 水晶玉を通してみる限り視界は0と言っていい。なるほど、これがどれみ姉が携帯で話していた濃霧か。確かにこれなら、泣き言の一つや二つこぼしたくもなる。だからこそぽっぷには、どれみ姉がこんな時間に外出している事が意外だった。どれみ姉は何故、夜明けを待たずに外に出たのだろうか? 少なくとも日が昇れば、もう少しマシな状況になるはずなのに。一刻も早くバッテリー切れの携帯を回復させたかったのだろうか? それとも何か、春風邸にいられない事情でもあったのだろうか?

「こんな状況で外に出て、お姉ちゃん大丈夫なのかな? 濃霧の中にさ…」
「わかるよ。映画やゲームのように怪物が潜んでるかもって心配なんだろう? ボクも気になってたから、この2〜3時間、水晶玉を通して調べられるだけ調べてみたんだ。だけど今のところ危険はなさそうだよ。少なくとも、体温を発する生命はどれみちゃん以外いなかったからね」
「濃霧の中にはお姉ちゃんしかいないって事?」
「熱を発しないモノ……例えば、霊的な存在ならいるかもしれないけどね。生命に関してはどれみちゃん以外、虫一匹いなかったよ」
「つまり…お姉ちゃんしかいない世界…」
「調べた限りでは、そうなるね」
「ねえ、むさしクン。お姉ちゃんは一体どこにいるの?」
「美空町であって美空町でないところ……かな? 一言で言えば異空間なんだけど、異空間と言っても色々あるからね。ちょっとトランプを使って説明しよう。このハートのカードを仮に『人間界』とするね」

 そう言うと暁は、懐からカードの束を出し、リビングのテーブルに一枚置いた。

「ちょっ…ちょっと待った〜!!(^^;
 話の腰を折って申し訳ないんだけど! このトランプ何なの!?」

「これかい? オヤジーデが人間界に来た時、魔女界土産にもらったんだよ」
「魔女界土産って…。いや、だから、どうしてお姉ちゃんの絵が描かれてあるの?」
「え? 判らないかい? どれみちゃん達は今、魔女界の女王様をしているハナちゃんの育ての母……。言うなれば『聖母様』なんだよ。商魂たくましい魔女達が放っておくわけないだろう? 魔女界では今、どれみちゃん達の関連グッズが大量に出回っているんだよ。魔女界と人間界は正式に国交を結んでないから、著作権や肖像権なんて気にすることもないしね」
「そ、そうなんだ……(^^;

「さすがに『聖母様』のどれみちゃん達には及ばないけど、ぽっぷちゃんも商品化されてるらしいよ。魔女界に行く機会があったら、買ってこようか?」
「……いりません(v_v)」

 暁はどれみのカードの上下に3枚のカードを置いた。それぞれダイヤは藤原はづき、クラブは妹尾あいこ、スペードは瀬川おんぷが描かれている。

「話を続けるよ。次にダイヤを魔女界、スペードを魔法使い界、クラブを…そうだな、音楽界としようか。実際にはもっと色々な世界があるわけだけれど、とりあえずこの4つの世界で説明するね。この縦に並べた世界は『異世界』として存在するわけだけれど、簡単には行き来できない。何故だか判るかい?」
「えっと……結界や魔法で往来を制限してるんだっけ? 確か昔、そんな話を聞いた気がする」
「流石はぽっぷちゃんだ♪ あんなに小さかった頃に聞いた話を良く覚えてるね。
 魔女界と人間界は千年前にマジョガエルの呪いがかけられるまでは交流が盛んだったし、昔の魔女界と魔法使い界は険悪な関係だったから、魔女界側が国境線に強力な結界を張って魔法使いの侵攻を防いでいたんだよ。逆に言えば、魔法や結界さえ取っ払えば、自由に行き来できる世界ってことになる。
 じゃあ、次に進むよ。縦の世界があるって事は、当然横の世界もあるわけだ」

 そう言いながら、暁はハートの左右にカードを置いてゆく。

「SFではおなじみだけど、ぽっぷちゃんは知ってるかな? 横軸はいわゆる平行世界。パラレルワールドだ」
「パラレルワールド……。そっくりだけど微妙に違う隣の世界の事?」
「なんだ、SFもいける方なのかい? 凄いな。この話についてきてくれた女の子はぽっぷちゃんが初めてだよ」
「そこにはもう一人の自分がいて、自分とは違う人生を送っているって言われているよね。本当にあるかどうかは判らないけど」

「そこには天才じゃない普通の女の子のぽっぷちゃんがいるかもしれないし、魔女見習いにならなかったぽっぷちゃんがいるかもしれない。逆に、プリキュアのようなスーパーヒロインになっているぽっぷちゃんがいるかもしれない」
「プ、プリキュア?」

 なじみのあるキーワードが出て、ぽっぷは再び話の腰を折ってしまった。

「ぽっぷちゃんはプリキュアを知ってるのかい?」
「ウワサには聞いたことあるけど……、詳しいことは知らない。プリキュアって何なの?」
「判りやすく言えばご当地スーパーヒロインかな。ぽっぷちゃんと同世代の女の子が、凶悪な力を手に入れて悪と戦うわけなんだけど……。いかなる事情があるにせよ、可憐な女の子を暴力沙汰に巻き込むのはどうかと思うよ。ましてや、相手が悪人とはいえ……」

 悪人とはいえ……。それ以上のことを暁は語らなかった。ぽっぷも追求する気にはなれなかった。聞かなくても言いたいことは判っている。それは凶悪な力を持ってしまったぽっぷにとっても、切実な問題だったから。それにしても、何故ここでプリキュアの話題を出すのだろう? 例え話に出るほど有名なのだろうか? それとも、暁はどれみ姉だけでなく、ぽっぷの秘密も水晶玉で覗き見しているのだろうか?

「むさしクンて、プリキュアに詳しいんだね」
「実はボクが中学に行っていた頃だけど、関西に行ってるレオンくんが……FLAT4のメンバーの一人なんだけどね、関西で思いがけずプリキュアと関わることになってさ。興味が湧いて、美空市にもご当地プリキュアがいるんじゃないかと思って、色々調べたんだ。そしたら、20年くらい前に美空町にもいた事がわかってね」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。確かレオンくんて、あいちゃんのことが大好きなんだよね? 関西のプリキュアって、ひょっとしてひょっとすると、
あいちゃんのことなの!?」
「う〜ん。可能性はあるけど断定は出来ないんだ。レオンくんは『詳しいことは秘密なのさ〜!』とか言って教えてくれないんだよ。もしかしたら他の女の子かもしれないし」
「ああ、そうだよね〜。FLAT4は揃いも揃って浮気者だしね〜(-_-#)」
「あははは、ぽっぷちゃんにはかなわないな〜(^^;」


Scene5-2◆どれみの行方

「ところで……何の話をしてたんだっけ?」
「だからFLAT4は浮気者で、実にけしからんって話……あれ? (?_?)
 え〜っと、レオンくんがプリキュアと仲良し
……でもなくて。……パラレルワールド?」
「そうそう! それそれ! パラレルワールド、平行世界だよ!」
「そっくりだけど微妙に違う隣の世界……。あ! もしかして、お姉ちゃんがいるのはパラレルワールドなの?」
「うん。ボクも最初にそれを疑ったんだ。濃霧でわかりにくいけど春風邸も町並みもそっくりだったから。平行世界に迷い込むなんてよっぽどの事がない限りあり得ないけど、あり得ないトラブルに巻き込まれるのがどれみちゃんだしね」
「確かに、巻き込まれるというか、巻き起こすというか……」
「どれみちゃんはもしかしたら、人類が滅亡して誰もいなくなってしまった平行世界に迷い込んでしまったんじゃないかって。だけど違う。これは平行世界なんかじゃない」

 暁むさしはテーブルに置いたトランプを指さしながら説明を始める。

「異世界は魔法や結界によって往来が制限されているけど、それは魔法や結界さえ無ければ自由に往来できるって事でもある。広い意味では、異世界は一つの世界と言ってもいい。
 だけど平行世界は逆でね。世界の壁を越えることは極めて困難なんだ。偶発的な事態を除けば、最先端の魔法科学と莫大な費用をかける必要がある。平行世界はどんなにソックリでも別世界なんだよ」
「それで……平行世界じゃないって根拠はなんなの?」
「携帯電話だよ。どれみちゃんの携帯にかけてきたの、ぽっぷちゃんだろ? それで気付いたんだ」
「私がかけた電話が?」
「平行世界ってのは『平行』と言うだけあってね、均等に距離が保たれていて、よっぽどのことがない限り干渉し合うことはないんだ。携帯電話程度の電波が隣の世界に漏れることはまず無いし、魔力だって超強力なやつでないと届かない。どれみちゃんが平行世界に行ってしまっていたら、水晶玉で見ることだって出来ないはずなんだよ。仮に見えたとしても、それがボクらの知ってるどれみちゃんとは限らない。何しろ、平行世界とほぼ同じ数だけ、どれみちゃんもいるんだから」
「……なんだかややこしくなってきたから整理するね。
 第1に、私の携帯とむさしくんの水晶玉、二つの方法で確認できたお姉ちゃんは、私たちの知っている、私たちの世界のお姉ちゃんで間違い。
 第2に、お姉ちゃんのいる場所は私たちの世界にソックリだが、第1の理由から平行世界ではない。
 それで?」
「第3に、ボクらの世界にいるわけでもないってことかな」
「………どゆこと?」
「ボクにはこの濃霧に意図を感じるんだよ。」
「意図?」
「濃霧の最大の効果は視界を遮ることじゃないかな。そこに意図があるとすれば、周囲の景色を隠すこと。そして、どれみちゃんの行動範囲を減らすこと。この2点じゃないかって。つまり……これは事故ではなく、誘拐事件じゃないかって思ったんだ」
「ゆっ、誘拐事件?」
「もちろん今はまだ推測の段階だよ。確たる証拠がある訳じゃないから。でも、もしこれが誘拐事件で、どれみちゃんを濃霧の中に閉じ込めているのだとしたら、わざわざ別世界に行かなくても犯行は可能だからね。人里離れた山奥に美空町の一部を本物ソックリに造って、濃霧で周囲を見えないようにするくらいなら、魔法を使えば簡単だし、それなりの予算をかければ人間の手でも可能だよ」
「仮にそうだとして、そこまで手を込んだことをする目的は何?」
「多分……どれみちゃんを独占したくて、虜にしたんじゃないかって思う」
「なるほど! 動機から察するに、真犯人は小竹くんか、暁くんの自作自演だねっ」
「お〜い(^^; そりゃあ、独占したいのは山々だけど……」
「え?」
「……いや、何でもない。また脱線してきたから話を戻すよ。
 もしぼくらと同じ世界にいるのなら、どれみちゃんを想いながら魔法で瞬間移動すれば、どれみちゃんのいる場所に跳ぶことが出来るんだ。だから1時間前くらいに試してみた。すると……」
「すると?」
「美空邸の玄関前に出ちゃったんだ。危ないところで出かけようとしていた君のお母さんと激突するところだったよ」
「……それはどういう事なの?」
「ボクも訳がわからなかった。だけど水晶玉を見直すと、ちゃんとどれみちゃんが玄関にいるんだよ。どうして目の前にいるはずのどれみちゃんがいないのか。そしてその後のぽっぷちゃんからの携帯さ。それでようやく判ったんだ。どれみちゃんがいる場所」
「それはどこなの!?」

 暁は手に持ったトランプをハートの7の上に重ねる。それはジョーカーのカードだった。

「どれみちゃんは今、美空町を模して造られた『偽装世界』に閉じ込められている」

「偽装世界……つまり、私たちの世界になりすましてるってこと?」
「名付け方が正しいかどうかは判らないけどね。でも、この名前が一番しっくり来ると思うんだ。異世界なら風景が同じなんて事はないし、平行世界なら通信なんて出来ない。残された可能性は亜空間の一種だけど、さっきも言ったように、どれみちゃんを虜にするためだけに存在するような感じがするんだ。なんて言えばいいのかな。昔から人が住んでいて町並みを造っていったんじゃなくて、美空町をソックリコピーしただけって感じがするんだよ」
「美空町を? それとも世界を丸ごとコピーした? そういえば、私が懐中電灯をベッドの下に置いたのって昨日なんだよね。ってことは、それ以降に世界がコピーされたってこと?」
「そう言うことになるね。町並みをコピーするだけなら人間にだって可能だよ。予算はかかるだろうけどね。だけど空間を丸ごと物理的にコピーするなんて事は、魔法使いや魔女の力でも不可能なんだよ。それが出来るとすれば神様くらいさ。例えコピーでも、天地創造に他ならないのだから」
「神様……」

 ぽっぷはふと『西風の神』を名乗るゼピュロスを思い起こす。ぬいぐるみの姿をしてるけど、もしかして魔女や魔法使い以上の力を持った存在なのだろうか?

「それで、どうしてお姉ちゃんが助けられないの? 神様が怖いから?」
「どれみちゃんを助けるためだったら、神殺しだろうと何だろうとやってみせるさ。これまでお披露目する機会がなかったけど、ボクら魔法使いは魔女と違って戦闘魔法に特化してるんだぜ」
「そ、そうなんだ。でも、それなら尚のことどうして?」
「座標が判らないんだよ」
「座標?」
「異なる空間に移動するには、空間の一を特定するための座標が必要なんだよ。さっきも言ったけど、平行世界は均一に並んているから、空間座標の特定は比較的容易なんだ。多少の誤差は魔法で補正されるしね。だけどこの偽装世界は、あまりにもボクたちの世界に近すぎて、それが逆にネックになってる。魔法で瞬間移動しても、偽装空間が認識できず、補正によって強制的にボクたちの世界へ戻ってしまうんだ。魔法による補正を解除して瞬間移動するしかないけど、そのためには偽装世界の正確な空間座標が必要になる。正確な座標も無しに瞬間移動すれば、十中八九空間の隙間に迷い込んで永遠に戻ってこれなくなってしまうからね」
「……そ、それじゃあ魔女界は? 魔女界に動きは無いの?」
「確かに魔女界になら魔法使い界に無い秘術もあるかもしれない。どれみちゃんの消失にも当然気付いているだろうね。だからオジジーデ伯爵に、魔法使い界を通して正式に問い合わせてもらったんだ。でも、情報封鎖中にて何も答えられないってさ。平静を装っていたみたいだけど、多分大騒ぎなんじゃないかな。だからマジョルカに問い合わせてもどうにもならないよ。いざという時の為の情報源としてオヤジーデを魔女界に派遣したっているのに、肝心な時にいないし。悔しいけど、ボクはなんの役にも立てない。本当にごめんよ、ぽっぷちゃん……」


Scene6◆考察

 暁むさしは慌ただしく帰宅した。彼の携帯に、お向かいに住んでいる『幼なじみ』とされる子から連絡が入ったためだ。暁が魔法使い界の王子様だけに、怪物くんに対する怪子ちゃん、あるいはえん魔くんに対する雪子姫のような関係かと勘ぐりたくなるが、実際のところは普通の人間の女の子である。暁が福井県の小学校に留学していた頃から彼女とその家族には生活面で世話になっていて、暁は頭が上がらないらしい。例えるなら、『デビルマン』の不動明に対する牧村美樹だろうか。
 ま、ぽっぷにとってはどうでもいい話ではあるのだが。

 『異世界』に『平行世界』に『偽装世界』……。暁の語った『世界』の有りようは、実に興味深いものだった。知ったところで何も解決しないが、それでもイメージできるだけましというもの。思わず、どれみ姉そっちのけで食いついてしまった事は、ここだけのナイショである。
 ただ、自分の秘密を漏らさねばならなくなるため、ぽっぷは敢えて指摘しなかったが、暁の携帯電話に対する解釈は間違いである。彼は『偽装世界』が限りなく『現実世界』の近くにあるため、何かの拍子に電波を送受信出来るようになったと解釈したようだが、2つの理由から否定される。

 第1に、通話中の奇妙な現象である。
 ぽっぷがどれみ姉と携帯電話で話をしていた時、姉のいる場所…暁の言うところの『座標』…に近づくと音声がクリアになり、離れるとノイズが酷くなった。トランシーバーのように電波を直接やりとりする無線機なら、『座標』に近づくことで音声がクリアになるのは判る。だけど、携帯電話の電波は基地局のアンテナを経由するのだ。『座標』に近づいたからといって音声がクリアになるわけではない。

 第2に、そもそも本当に電話出来ていたのか? という問題である。
 ぽっぷが電話した時間を確認しようと、携帯電話の発信履歴を確認したところ、どれみ姉と話をした時の発信履歴だけが残ってなかったのだ。
 ぽっぷがどれみ姉と通話したのは夢でも幻でもない。バッテリーは消費されているし、暁が水晶玉を通してどれみ姉を見ていたことで裏付けられている。
 携帯のプログラムにバグがあり、今回だけたまたま記録が残らなかった……というのも変な話である。

 ぽっぷの携帯は基地局を介さずに電波を送受信し、かつ、携帯の機能を使わずにどれみ姉と通話した。その理由を『偽装世界』に求めるのは、どう考えても無理がある。何か別の要因が働いていると考えるべきだろう。例えば………春風一族には秘めたる力があり、事件を境に力が覚醒し、姉妹の絆によって通話を可能にしたとか?
 ……もっと無理があるような気がする。却下。
 ぽっぷはもっと可能性の高い要因を確認するべく自室へと向かった。そして鳥かごのゼピュロスにこれまでの状況を説明し、意見を求める。

「ねえ、ゼピュロス。偽装世界にいるお姉ちゃんと携帯で話ができたのって、もしかして私がそれを強く望んだからかな? つまりクロリスとしての能力が働いたって事じゃないかな?」
「伝令神ならそんな能力もあるかもしれんピュが、エロかわいいお前は花の女神だピュ。覚醒したってそんな能力は出ないピュよ」
「伝令神……か。そうだよねえ。私はエロかわいいだけの、花の女神様だものねえ」

 ぽっぷはため息をつきながら、ふと、花瓶に差されているバラの花束を見る。ピアノ発表会の時にもらって1週間以上経つが、まだ活き活きと咲き誇っていた。もしかして……クロリスの能力が影響しているのだろうか? だとしても闘いに役立つとは到底思えない。やはり知恵と勇気だけが、ぽっぷにとっての勝利の鍵のようだ。

「オレにはケータイなるものがどういうものか判らんピュ。だけど……もしかすると、もしかするピュが……」
「え? なあに?」
「オレたち神々は眠りについている者を除けば、互いを認識できるピュ。クロリスが姉上と話したいと強く願ったことで姉上の側にいる『誰か』が感応し、ケータイが使えるようになったのかもしれないピュ」
「そ、それって!
 もしかして、私に憑依している神札が基地局の代わりをしたって事?
 つまり、お姉ちゃんにも神札が憑依しているって事?」

「それは判らんピュ。憑依してる可能性なら、誰にでもどんな物にでもあるピュ。姉上に憑依しているかもしれないし、姉上の持ち物に憑依している可能性もあるピュ。でも、もし姉上に神が宿っているとすれば、アカツキとかぬかす青二才が『偽装世界』と呼ぶ空間も、姉上が創りだしたことになるピュ。何か思い当たるコトがあるピュか?」
「う〜ん、そうか。人一倍寂しがり屋のお姉ちゃんが、独りぼっちの世界に好きこのんで引き籠もるとは思えないし…。じゃあ違うよね。ということは、犯人はお姉ちゃんの持ち物の何か…なのかな? いずれにせよこの事件は、この前のヒュドラと同じ、神か怪物の仕業って事だよね」
「その可能性の方が高いと思うピュ。ついでに言うと、神々は自分に近いイメージのモノを依り代に選ぶ傾向があるピュ」
「なるほど、そこから犯人の正体が絞り込めるんだね。ヒュドラは教頭先生の白蛇のストラップに憑依していたけど……。ところでゼピュロス、あなた西風の神様のはずだけど、どうしてペンギンなのさ」

「オ、オレに聞かれても判らんピュ! 良く判らんピュが、凄く馴染むんだピュよ」

「………そういえば、ペンタローって風来坊なんだよね。自分の居場所を求めて、物語中ずっと旅をしてるんだよ。風つながりといえば風つながりなのかなあ…」
「オッ、オレは家庭第一のヤサシイ優しい愛妻家だピュよっ」
「ペンタローだって、恋が実って居場所が見つかれば家庭を顧みる子に……」

 そこまで言いかけて、ぽっぷは口をつぐんだ。もしかして今のゼピュロスは、愛する人と居場所を見つけた……『ペンタローが行く!』の最終回でも描かれなかった、ペンタローの『その後』の姿ではないだろうか? 最終回に不満を抱き、ぽっぷが幼心に描いた……。想い……想いか…。
 幼いぽっぷがイメージしたペンタローの『その後』と、ゼピュロスの今の姿に因果関係があるかどうかは判らないが、ぽっぷは『想い』と言う言葉がひっかかった。もし、神札と人の想いに何らかのつながりがあるとすれば、もしかすると、どれみ姉を虜にした犯人のヒントに繋がるかもしれない。犯人さえわかれば、対処方法が判るはず。犯人さえわかれば……


Aパート完。引き続きBパート


#03 Aパート S-0, S-1, S-2, S-31, S-32, S-4, S-51, S-52, S-6,
 
オモイドウ
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